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2012年 02月 01日
![]() 17(487)宮部みゆき『東京下町殺人暮色』光文社(光文社文庫)、1994年。 版元 → 情報なし 本の紹介が続くのは、書き残すほどのこともない単調な生活のためでもあります。この単調さが悪いとは思いませんが。 小説を書くときに、登場人物の誰かに書き手自身の考えを投影する・仮託するということはあるのでしょうか。“この人にわたしの考えを言ってもらおう”というふうにして登場人物を設定することはあるのでしょうか。 ということを本書を読みながら思いました。こう思ったのがはじめてだということではありません。以前からそんなことを思うことがありましたが、今回はもっと意識的に・自覚的にそれを思ったということです。 あるいは特定の登場人物に限定せず、複数の登場人物に書き手の考えを分散的に・部分的に言ってもらうようにすることもあるのでしょうか。 どちらがより簡単かと考えるとそれは前者であり、だから小説家はより複雑になる後者を採用することが多いのかなと思いました。が、これは素人考えであり、後者のほうが実はより容易であるのかもしれません。 主人公は八木沢順、順の父が道雄、職業は刑事、八木沢家の家政婦がハナ、慎吾は順の友人です。 ↓ 自分に子どもはいないけれど、同意。子どもをもうけるとか、教育をするとか、それらは大人にとっての問題であり、大人だけの問題であると言い切ってもよいとわたしは考えるに至っています。 □ 道雄が近づいて行くと、しゃがんでいた女は立ち上がり、子供を抱く腕に力を込めた。 すがりついたのだと、道雄は思った。我々大人は、怯えたときにすがりつく相手が欲しいから子供をもうける。子供こそが、どんなことも乗り切っていくことのできる力を与えてくれるように思うから。 □(24) ↓ 自分にとっての研究もこの「たまたま」である可能性もあるのだなと、ときどき思います。そして、少し空しくなります。 □ 「自分の見たものを残しておきたいと、ずっと思っていたんだ。方法はなんでもよかった。たまたまそれが日本画だったというだけでな」 「そうかな……」 「そんなものだよ。才能なんかじゃなかった。だから見てごらん、〈火炎〉以来、私はろくな仕事をしとらんから。私は素人なんだ。ちょっとばかり執念深かったというだけの素人だよ。〈火炎〉を描いて、あとはその余韻でずるずる生きてきただけだ」 「それはなんか、すごくキビシイ言い方だと思います」 □(120) ■ 「自分の考えたことを残しておきたいと、ずっと思っていたんだ。方法はなんでもよかった。たまたまそれが研究だったというだけでな」 「そうかな……」 「そんなものだよ。才能なんかじゃなかった。だから見てごらん、あの論文以来、私はろくな仕事をしとらんから。私は素人なんだ。ちょっとばかり執念深かったというだけの素人だよ。あの論文を書いて、あとはその余韻でずるずる生きてきただけだ」 「それはなんか、すごくキビシイ言い方だと思います」 ■ ↓ 家政婦のハナ(← うわぁ……) □ 「そうではございますが、ねえ、ぼっちゃま。わたくし、一緒に奉公していた年上の家政婦に教えられたんでございますよ。〔ママ →〕あたしたちのこの言葉、この態度は武器なんだ、とね」 「武器?」 「はい。世渡りの為の武器でございます。わたくしは、この言葉を使うことで武装しておりました。本当のわたくしが、言葉で武装することで家政婦になるんでございます。そう考えると、わたくし、ずっと楽になりました」 ゆっくりと、その言葉の意味をかみしめてみた。 「でもね、ハナさん」 「はい?」 「そしたら、今も武装してるの? うちにいるときのハナさんはホントのハナさんじゃないの?」 それは悲しい、と思った。だが、ハナはにこにこして首を振った。 「いいえ、今は違います。今はただの習い性でございますね。五十年も続けているうちに、身についてしまいました」 ぼっちゃま——と、ハナは身を乗り出した。 「わたくしが申し上げたかったのは、人は誰でも武装するものだ、ということでございます。ただ、何で武装するかは、その人によって違います。鎧を着る人もいれば、鉄砲を持つ人もいます。空手を習う人もいるでしょう。そして、どう武装しているかによって、歩く場所も違ってまいります」 □(190-1) ↑ 感情労働を想起しました。 ↓ 中途半端な想像力で他者を語るなと伊坂幸太郎に以前叱られましたが、やはり想像力は大事だと思います(伊坂も想像力が大事でないとは言っていない)。しかし、自分に当てはまることが他者にもそのまま当てはまると考えてしまうことはときに短絡であり、それゆえに危うさをも含み持つということも考えないといけません。ただ、逆に他者のことなどわからないと言い切ってしまうことも同時に短絡であり、危ういものです。「悲劇」や「恐怖」ならば他者と共有できるはずだと考えたリベラル派の哲学者の言うことも、だからわからなくはない。 □ 「それより、想像力を伸ばすことではございませんか」 「想像力?」 「はい。他人様の迷惑をおもんぱかるのにも、想像力が要りますでしょう。わたくしはつねられれば痛い。では、あなたもきっとつねられれば痛いでしょうねと思う気持ちでございますね」 □(232) □ 「ごめんで済めば、警察は要らないんだからさ」 「オレはそうは思わない。とうちゃんがいつも言ってる」と、慎吾は拳骨を握った。「『ごめんという気持ちがあれば、警察が要らないことはいっぱいある』って」 「いいお父さんだ」と言って、川添警部は二人の肩に両手を置いた。 □(226) □ 「殺人や強盗をする少年犯の実態がどんなものなのか、俺はそれほどよく知っているわけじゃない。だが、一つだけ、これだけは確かだと思うことがある。それは、彼らには想像力が欠けている、ということだ」 速水を振り返ると、彼はじっとこちらを見つめていた。 「想像力がない」と、道雄は念を押した。「だから、常識のある大人たちの目には残虐きわまりないことが、平気でやれる。こうしたら相手はどう感じるか、そこに頭が回らないんだ。生きてそこに存在している他人を、自分と同じ生身の人間だと思うことができない。ただ、自分の欲望の対象としてしかとらえることができない。 だが、そういう彼らも、自分の欲望を満たすために手にかけた相手も、やっぱり自分と同じ人間なんだと気づくときが、必ず一度はくる。それはな、速水。相手を殺してしまったときだ。その死にざまを見たときだ」 速水は息を飲んだ。 □(252) @研究室 2012年 01月 31日
![]() 16(486)矢作俊彦『ららら科學の子』文藝春秋(文春文庫)、2006年。 全528ページ。 ※ 単行本は2003年に同春秋より刊行。 版元 → ● 読みたかった本。偶然古本屋で発見しました。1968年の東京を生きていれば、内容をもっとよくわかったのではないかと思います。68年と98年、中国と日本、時間軸と空間軸とが交差します。 昨日の宮部みゆき『名もなき毒』の「怒り」と、奇妙に接続するところもあります。 ちなみに、ヴォネガットの『猫のゆりかご』とケストナーの『点子ちゃんとアントン』が作中に登場するのですが、それらも読みたくなりました。 ↓ まずはいくつか。 □ 朝方、ジョン・レノンが二十年ほど前にニューヨークで射殺されたことを知った。この犯人を、ならずものともテロリストとも呼ばないのは何故だろう。彼は首をひねった。 □(298) □ 「そんなこと言ったら、結婚だってただの売春と大した違いはないわ」 □(310) □ 「たまたまってことあるじゃん。たまたま一回のときに出くわして、それきりだったら、結局、それが本当みたくなっちゃうね」 □(505) ↑ これは牛丼屋でビールを呑んでいたところをこの本の主人公「彼」に見つかった女子高生の発言。 ↓ 中国の“1968年”。 □ 「人民公社が何を生んだか知っているかね」 彼はとっさには答えられなかった。頭は、きつい毎日の農作業のことで一杯だった。 「飢餓だよ」と、義父は言った。 「ほら、こんな具合に」と、そこだけ風船のように膨れた腹をさすった。 「腹が減るから皆、怒りやすくなる。空腹が生む怒りは他人にしか向かわない。民、食をもって天と成すだ」 下放されて一、二年もすると、紅衛兵たちは故郷への帰還を許されるようになった。一九七〇年代の終わりには、農村から下放青年はいなくなった。しかし、莫賓の村には、彼と義父、やがて彼の妻になる娘が残されていた。 □(92-3) ↓ アメリカの「普遍主義」。 □ いったい君はどこへ行きたいんだ。彼は尋ねた。そうだな、ハワイあたりがベストだね。黒人兵は笑った。 「ウビ ペデース、イビ パトリア」口から言葉が転がり出た。 「何ですか、それ?」と、傑が尋ねた。 「立っているここが祖国だって、そういう意味だよ」 「ホワイトハウスと同じだな」 礼子が声を立てて笑った。 「大統領は核攻撃スイッチをいつも持っていて、それがある場所がホワイトハウスなんです」 □(322-3) □ 「ハワイが、何であんな簡単にアメリカのものになっちゃったか判りますか? 土地を所有する、売り買いするってことが、ハワイのロコには最後の最後までどうしても理解できなかったからなんですよ」 □(327) ↓「貧困」と「貧乏」 □ 「貧困と貧乏は違うぞ」と、志垣は言った。 「貧困っていうのは天然痘と同じさ。死の病だが、そのうちどうせ特効薬がうまれる。科学の敵じゃない。しかしな、貧乏は風邪みたいなもんだ。特効薬なんてできっこない。だいたい人によって症状も違う。三十九度の熱出しても、会社へ行く奴は会社に行く。くしゃみひとつで寝込んじまう奴がいるように、貧乏で会社を休む奴もいる。日本は今のところ貧乏じゃない。しかし、貧困には喘いでいる。だから、おまえには見えねえのさ」 □(353) ↓ レトリックではないとわたしは思います。 □ 「主義が間違っていたとしても、主張は間違っていなかった」と、彼は礼子に言った。 「どういう意味? rhetoric はずるいわ」 「おい。いいかげんにしろ!」と、傑が怒鳴った。広男の交差点に出来た渋滞に、車は立ち止まっていた。 「いいんだ。最後まで言わせてくれ」 傑は不快そうに口の端を嚙んで、センターミラーからこちらをうかがった。そうすると、妙に子供っぽく見えた。 「必ず正しいものが勝つというわけでもない。一度負けたからって、二度とチャンスがないわけじゃない」 「でも失敗したものを、また実験することはないわ。何億人もの人生が失われるような risky な実験、するほど価値がある思想なんてないもの」 言って、彼を見た。「そうじゃなくって?」 「黙れ!」傑が怒鳴った。 「バカが。利いたふうな口ききやがって! 生意気言うんじゃないッ」 「バカとは何よ!」礼子が怒鳴り返した。 □(402) ↓「国家」に対抗してきた者はやはり「国家」にこだわっていたのであり、その意味では遂行的に「国家」を強化してきたとも言えるがしかし、“無視すればよい”と言って片付けるわけにはいかないところが「国家」にはある——。 □ 「自分の生き死にを、いちいち国家に確かめてもらう必要なんかない」 □(150) □ 傑は、もう二杯ビールを注文した。眼の周りがすでに赤かった。 「親父がよく言っていたものです。世の中で信用できるのは、自分、家族、友達、それだけだって。女は入っていないんです。日系だけど、結局アメリカ人なんだな」 「信用できないものは何なんだ?」 「ぼくに言わせれば、自分、家族、友達、——同じだな」 「その順なのか」 「ええ」 「国家って言うかと思ったよ」 「国なんかあってもなくても似たようなもんだ。そうじゃないですか」 「あるのとないのとじゃ全然違う。それだけはたしかだ」と、彼は言った。 ビールが来た。手元のジョッキをあわてて空けた。込み上げてきたゲップを我慢した。鼻の奥に火花が散った。 □(522) ↓「女」は気付くのです。 □ 正月には帰ると、あわてて言った。 「しなくちゃいけないことが、たくさんあるんだ」 「警察に石投げるの?」 「それは、しちゃうことだ。しなくちゃならないことじゃない」 「兄さんは世の中が何もかも気に入らないだけよ」 「親父がそう言ったのか」 「お母さん」と、妹が言った。 「いろんなことに怒ってるんだって。普段、怒るの我慢してたから、こんなことになったんでしょう。あたしにも、怒ったことないじゃん」 「気に入らないから怒ってるんじゃないよ」 とは言ったものの、自信はなかった。彼がそのころ敵にしていたのは、目の前の警官や学内の右翼ごろつき学生だった。本当に怒るべきものはどこにあるのか。俺は本当に怒ってるのか。ふたつの疑問がないまぜになって、また言葉を失った。 □(238-9) □ 「本当に好きなものを言ってみて。ひとつだって言えないでしょう」 妻はこちらに顔を向けた。目が光り、それがこぼれ落ちた。西日に赤らんだ妻は、とても美しかった。 「この世に在るものより、この世にないもの、この世にとうとうありはしなかったものの方が絶対、好きなのよ」 あいかわらず、言っている意味が分からなかった。 □(347-8) この最後のは、かなり響きます。わたしにもそういうところがあると思います。 @研究室 2012年 01月 30日
![]() 15(485)宮部みゆき『名もなき毒』幻冬舎、2006年。 全489ページ 版元 → ● 「名もなき毒」の名は、実は「怒り」です。不公正(unfairness)への怒りと言ってもよい。通読してそう思いました。ただし、そこには常に、“それ”は誰にとっての・どこから見ての「不公正」なのか、という論点が付きまといます。また、一方で「権力」を有する者にとっての「不公正」は比較的速やかに認識され、対処をもされながら、他方で「権力」を有しない者にとっての「不公正」は比較的認識されにくく、直されにくいということもあります。 ちなみに、474ページ以降の記述(紙パックの実験と探偵業)は、「真相」はもう一層深いところにありそうな予感を読み手に抱かせます。続編の予定があるのでしょうか。 ↓ 丸くなるな。丸くならないことにも丸くなるな。苦しみに安住してはならない。 □ 硬派のジャーナリストであっても、それを生業とする以上、一種の人気稼業ととらえられてしまうことを免れない。それが現代社会だ。正邪や真偽より、好感度や注目度、どれだけ目立つ存在であるかで、まず計られる。そのなかで言いたいことを言い、書きたいことを書いて生き抜いてゆくには、嫌でも尖らざるを得まい。が、人間というのは面白いもので、尖っていること自体を楽しむこともまたできるし、一方で世渡りをするために、それまでしなかった妥協をもするようにも〔ママ〕なる。上手く尖っていれば、それを許されるようになるからだ。仕事が粗くなるプロセスとは、煎じ詰めればそれだろう。 □(201) ↓ そう思いたい。思いたいがしかし、その「正しさ」はいつの・どこの・誰の? と問わずにもいられない。「正しさ」はどこへ収斂していくのであろう。 □ 「えっと、いろいろ大変だと思いますけど、元気出してくださいね。正しいことは、時間かかっても、必ず正しいって証明できますから」 □(233-4) ↓ 権力論。「権力」と言うより「暴力」だと思いながら読みました。 □ 「究極の権力は、人を殺すことだ」 義父は続けた。口調は淡々としているが、目が光っている。 「他人の命を奪う。それは人として極北の権力の行使だ。しかも、その気になれば誰にでもできる。だから昨今、多いじゃないか」 私は黙ってうなずいた。 「五人の命を、ミネラルウォーターに毒物を混ぜるというだけの簡単な作業で奪ってしまうことができる。〔略〕死ななかったんだから違うという言い訳は通用しない。他人を意のままにしたという点は同じなのだから」 そうだ。我々はそういう人間を指して“権力者”と呼ぶ。 「だから私は腹が立つ。そういう形で行使される権力には、誰も勝てん。禁忌を犯してふるわれる権力には、対抗する策がないんだ。ふん、何が今多グループの総帥だ。無力なことでは、そのへんの小学生と一緒だろう」 □(260-1) ↓ 子どもの成績が悪くて怒る親が怒っているのは実は自分のことである、というのと同型。 □ 自分の子を責めるのは、自分を責めるのと同じだ。それが親というものだから。 □(284) ↓ 「戦争」を「原発」に、「空襲で焼け野原になった場所」を「放射能で汚染された土地」に、「東京」を「福島」に。するとこの「毒」は「怒り」ではなく「私益追求」と呼ばないといけない。 □ 「それに、いちばん大きな汚染源は“国家”なんですって」 〔略〕 「どういう意味?」 「戦争よ。空襲で焼け野原になった場所、とにかく瓦礫を埋め殺して復興したわけでしょう。そうしないことには立ち行かなかったから仕方ないんだけど、結果的に、東京の地面の下には何が埋もれていてもおかしくなくなっちゃったのね」 埋め殺しとは凄い表現である。 「だから戦争はしちゃいけないんだわ。やっぱりそうなのよ」 □(318) ■ 「いちばん大きな汚染源は“国家”なんですって」 「どういう意味?」 「原発よ。放射能で汚染された土地、とにかく瓦礫を埋め殺して復興したわけでしょう。そうしないことには立ち行かなかったから仕方ないんだけど、結果的に、福島の地面の下には何が埋もれていてもおかしくなくなっちゃったのね」 埋め殺しとは凄い表現である。 「だから原発はしちゃいけないんだわ。やっぱりそうなのよ」 ■ 実際に代入して読んでみて、自分でも怖いと思いました。 ↓ “普通”の意味。 □ 「こんなにも複雑で面倒な世の中を、他人様に迷惑をかけることもなく、時には人に親切にしたり、一緒に暮らしている人を喜ばせたり、小さくても世の中の役に立つことをしたりして、まっとうに生き抜いているんですからね。立派ですよ。そう思いませんか」 「私に言わせれば、それこそが“普通”です」 「今は違うんです。それだけのことができるなら、立派なんですよ。“普通”というのは、今の世の中では“生きにくく、他を生かしにくい”と同義語なんです。“何もない”という意味でもある。つまらなくて退屈で、空虚だということです」 だから怒るんですよと、呟いた。 「どこかの誰かさんが“自己実現”なんて厄介な言葉を考え出したばっかりにね」 □(337) □ 「犯罪を起こすのは、たいていの場合、怒っている人間です。その怒りには正当な理由がある場合もあれば、ない場合もある。いや、“ない”というのも、あくまで客観的にはないように見えるというだけで、本人にとってはちゃんとあるんですがね」 □(339) ↓ こういう「怒り」もあり、それに共感する自分をわたしは実感し、そういう自分をメタ認知する自分が嫌悪する。「怒り」は何も生まない、それどころかマイナスを生む。それを頭ではわかっていても、「怒り」が募ることもある。 □ 「僕も、楽したかったから」 〔略〕 「もう、何もかも嫌になっちゃったから」 〔略〕 「すごく悲しくて」 〔略〕 なんでこんなことしなくちゃならないんだろう。なんでこんなことを考えなくちゃならないんだろう。 なんで、僕だって少しは楽したいと願わなくちゃならないんだろう。少しどころか山ほどの楽をしている若者が、この世の中には掃いて捨てるほどいるのに。何も願わなくても、すべてかなっている人たちが大勢いるのに。 どうして僕一人だけ、そこから省かれているんだろう。 〔略〕君が悪いことをしたから、この人生のなかに閉じ込められたわけじゃない。君が選んだ人生じゃない。君に選択の余地はなかった。 〔略〕 「そしたら、何か急に腹が立ってきて。悔しくて、夜も寝らンないくらい悔しくて」 □(419-20) □ 「世の中のすべてに腹が立って、自分にはこういうことをする権利があると思ってました。迷ったりなんかしなかった」 □(440) ↓ 誤植 □ 「うん」と応じて私の顔を見て、、萩原社長は笑った。 □(352) @研究室 |
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