2008年 12月 28日
81(131) 池田清彦『脳死臓器移植は正しいか』角川書店(角川ソフィア文庫)、2006年。 (読了日:2008年12月21日) 「私の論点は脳死・臓器移植は、大量資本主義下の医療として致命的な欠陥を有しており、国を挙げて推進するようなものではないということに尽きる」(p. 7)。 以下、主にリバタリアニズム(自由至上主義)の立場――とはいえ、リバタリアニズムの主流派からはずれている立場――から、この主張の根拠が述べられてゆくが、それを引用している時間がいまはない。取り急ぎ、「読んだ」という記録だけ。残りの引用その他は年明けに行なおう。 そろそろ実家に向けて出発しなければ。 @自室 というわけで、年が明けた。 「私が反対しているのは脳死者からの臓器移植であり、人工臓器や他の動物からの臓器移植(異種移植)に反対しているわけではない。脳死者からの臓器移植はドナー(臓器を取られる人)とレシピエント(臓器をもらう人)のバランスが極端に悪く、いつまでたっても脳死者からの臓器は希少財である。市場社会では多くの人が欲しがる希少財の値段は極めて高いのが当然である。しかるに脳死者の臓器はタダである。脳死者のイゾクに大金を払って売ってもらい、レシピエントはそれを買って移植をしてもらうというのが、市場の原理からすれば当然なのだ。 しかし、さまざまな倫理的問題があり、どこの国でもそのような話にはなっていない。この脳死・臓器移植のシステムが市場原理にのっとっていない、あるいはのっとれない、ことこそが、この医療の最大の欠陥なのだ。〔……〕他人の金(税金のことだ)を湯水のように使って生き延びる権利などは誰にもありはしないのである」(p. 8)。 「脳死・臓器移植はやめた方がよいと私が思う最大の理由は、この医療は資本主義下の商品戦略として致命的な欠陥を内包するからだ」(p. 19)。 医療が資本主義のルールに則らなければならない根拠は何か。 この社会は資本主義社会である → この社会で起きたことはすべて資本主義のルールに則して決せられる ということになるのか。ならないであろう。 「人は自己の身体の管理権を有するだけで所有権はない。自己の身体は、自分が作ったわけでも誰かと交換して手に入れたわけでもない。物ごころついた時にはすでにあったのだ。自己の所有物であるはずがない。自分の所有物でないものを自己決定で処分する権利はない」(pp. 18-19)。 なるほど、このあたりが主流のリバタリアニズムと違うところ。 主流派リバタリアニズムは、ジョン・ロックが(おそらく)言いはじめたように、 わたしの身体はわたしのもの → わたしの身体が働きかけたものはわたしのもの という論理を採用する。 が、 (1) 「わたしの身体はわたしのもの」は当然であるように見受けられるが、それには実は根拠がない。池田もそこを突く。 仮に「わたしの身体はわたしのもの」が成り立つとしても、 (2) 「わたしの身体が働きかけたものはわたしのもの」が成り立たない。なぜわたしが働きかけたらわたしのものになるのか、それが説明されていないからだ。これは立岩真也が指摘するところだ。「わたしが働きかけたけれどもわたしのものではない」、その主張も「わたしの身体が働きかけたものはわたしのもの」と同じ論理性を持つ。なぜ、後者だけが正当化されるのか。根拠はない。 「社会にとって重要なのは、生物学的な死という事実ではない。この世の人々のネットワークから、はずれたということ承認である。だから生物学的に死んでいても、死んだという事実が伝わらなければ、社会的にはその人は死んだことにはならないのだ。〔……〕 人が死ぬと、どこの社会でも多寡の違いはあれ、さまざまな儀式を行う。それは死者の霊を弔い、なぐさめるといった宗教的な意味合いの他に、死を社会的なものとして認知させる意味も大きいと思われる」(p. 50)。 「私が科学に与えた定義によれば、科学とは変なる現象を不変の何かで説明しようとする営為である」(pp. 151-152、強調引用者)。 なるほど。 @自室
by no828
| 2008-12-28 09:48
| 人+本=体
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自省のために。他者の言葉に出会うから自分の言葉を生み出せる。他者の言葉に浸かりすぎて自分の言葉が絞り出せなくなることもある。自分の言葉と向き合うからその言葉は磨かれる。よろしくお願いします。 by no828 カレンダー
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