2009年 11月 01日
枕に書こうと思ったことが意外に長くなってしまったので、以下別途投稿。 74 (207) 増田剛己『思考・発想にパソコンを使うな 「知」の手書きノートづくり』幻冬舎新書、幻冬舎、2009年。 7月読了分。ここのところ結構長くノート術が流行っている。 ————— 「とにかくノートは『文章化』する。ここがとても重要である。そこがメモとは違う。文章化することで、自分の考えや気持ちを整理することができる。 〔……〕 文章化する最大の目的は、自分があとで読み返すことができるという点だ。 私は若い頃からずっとメモを取っている。膨大な手帳やメモ帳を手元に残しているのだが、二十年前のメモを見ても、それがいったいなんのメモなのかがさっぱりわからない。 これが『メモ』ではなく、『文章化』されていれば、あとから読んだときに、ああ、あのtきはこんなことを考えていたのか、こうして困難を乗りきってきたのかといったことがわかったはずだ。これは些細なことかもしれないが、あとで読み返されることを大前提とすると、ノートの文字はきれいである必要はないけれど、一年後あるいは十年後の自分が読めるものである必要がある」(50頁。強調は引用者、以下同様)。 本当に「些細なことかもしれないが」、「メモ」ではなく「文章化」。日々実感。 論文を書いているときの一番の援護は過去に自分が書いたものであったりする。自分が書いたものを核にして、あるいは契機にして、新たな文章を展開するということがときどきある。 ————— 「ブログしか書いていない人にとっては、そこに書けないこと、書かないことが心の中に澱のように溜まっているものだ。そういう意味では、現在のブログ社会にこそノートが必要とされているのではないかと思うのである」(67頁)。 ————— 「とくに『小説渡辺崋山』について書かれた杉浦明平の章は、興味深い。参考にした資料だけではなく、参考にできなかったものについても書かれているからだ」(79頁)。 ————— 「漱石が書き溜めたものは、統一されてはおらず、ある時期には書かれ、また中断し、書いてあるものもノートだったり、手帳だったりするのだ。漱石は試行錯誤し、あるいは中断しながらも、必要に駆られて記録を続けていったのだろう。その足跡はスマートなものではないけれど、私たちに通じる普通の人間の姿ではないかと思った。 つまり、最初から最後まで試行錯誤でいいのである。 これまでノートをこのように活用した経験がなかった人たちにとっては、この『試行錯誤』こそが、ものすごい宝物になるはずである」(228-229頁)。 「最初から最後まで試行錯誤でいい」が響いた。わたし(たち)は完成された技/術を求めがちである。試行錯誤抜きに完成まで行きたいと思ってしまうことがある。しかし、それは核心をすっ飛ばすことでもある。すでにあるものを参考にしながらも自分で作り上げていくほうが「ものになる」はずで、それは哲学という学問にかぎらず、普段の生活においても当てはまることなのだと思った。 ————— @研究室
by no828
| 2009-11-01 15:07
| 人+本=体
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自省のために。他者の言葉に出会うから自分の言葉を生み出せる。他者の言葉に浸かりすぎて自分の言葉が絞り出せなくなることもある。自分の言葉と向き合うからその言葉は磨かれる。よろしくお願いします。 by no828 カレンダー
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