2010年 05月 14日
版元 ホッブズ、トマス『リヴァイアサン(一)』水田洋訳、岩波書店(岩波文庫)、1954年。 * ホッブズはイギリスの人。原著の出版は1651年。当時のイギリスは清教徒革命の只中(1640-60年)。 “万人の万人に対する闘争”はあまりにも有名。 全4巻のうちの第1巻の3分の1しかきちんと読んでいないが、ホッブズの言いたかったことは次のことではないか、と予想(妄想?)する。すなわち、神から人間を剥離させ、人間を物事の基本に据えるが、しかし据えられるのは人間の理性ではなく、人間の情念である、その人間の情念からすべての議論を出発させたときに到達するのが「国家」である、以上。 最近(っていつからか厳密にはわからないし、そのきっかけもわからないが)、「感情」とか「情念」とか、経済学や政治学、労働論などではよく聞く。権力論においても、“言うこと聞かせてわからせるの面倒だから、直接気持ちに働きかけちゃえばいいじゃん”という立場が勢力を拡大しているように見受けられる。 □ すなわち、あるひとりの人間の諸思考と諸情念が、他のひとりの人間の諸思考と諸情念に類似しているために、だれでも自分のなかをみつめて、自分が思考し判断し推理し希望し恐怖し等々するときに、何をするか、それはどういう根拠によってかを、考察するならば、かれはそうすることによって、同様なばあいにおける他のすべての人びとの諸思考と諸情念がどういうものであるかを、読み、知るであろう、ということである。私がいうのは、すべての人において同一の、意欲 desire,恐怖、希望等々の諸類似性のことであって、諸情念の諸対象、つまり意欲され、恐怖され、希望され等々されるものごとの、類似性のことではない。 ■(39-40.傍点省略) トクヴィルとの親近性が感じられる。近代。みんなわたしと同じようなわたし。ここに他者はいない。 □ 全国民を統治すべき人は、かれ自身のなかに、あれこれの特定の人ではなく、人類を読まなければならない。 ■(40) むしろ危険な気もする。 □ 〔略〕対象と影像または想像とは、別のものなのだ。したがって、あらゆるばあいに感覚というものは、(私がのべたように)圧迫によって、すなわち、われわれの目や耳やその他の、それにさだめられた諸機関に対する、外部の事物の運動によって、ひきおこされる、根源的な想像にほかならない。 ■(45) 認識論。カント先生とは違う。 □ 《愛の情念》単独の人への愛が、単独に愛されたいという意欲をともなえば、愛の情念 THE PASSION OF LOVE とよばれる。 ■(105.傍点省略) これまでのところでもっともびびびと来たところ。なぜならば最近わたしは「愛」について考えて(ツイートして)いたから。古典なり哲学書なりは、それを著した人物と同じくらいの思考の深度に達しなければ、“わかる”という境地に辿りつくことはできない(たぶん)。逆に言えば、自分なりにその主題について考えて考えて考えたときにその本を取れば、おそらくすーっと入ってくる。ホッブズ的に言えば(と思い付きで書くが)、その本が難解なのではない、あなたがその本を難解にさせているのだ、ということになろうか。 ホッブズは、キリスト教的な愛を否定し、生身の人間の情念としての愛を「愛」として規定したのだと思われる。この本が書かれたのが清教徒革命の最中であったことを考えると、一層この一文の意味が際立ってくる(少なくともわたしにはね)。 @研究室
by no828
| 2010-05-14 12:36
| 思索の森の言の葉は
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自省のために。他者の言葉に出会うから自分の言葉を生み出せる。他者の言葉に浸かりすぎて自分の言葉が絞り出せなくなることもある。自分の言葉と向き合うからその言葉は磨かれる。よろしくお願いします。 by no828 カレンダー
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