2011年 08月 23日
71(393)舞城王太郎『阿修羅ガール』新潮社(新潮文庫)、2005年。 ※ 単行本は同社から2003年に刊行。 版元 内容はよくわからなかったが、ことばはいくつか拾うことができた。主人公は、中学生か高校生の女子。 ちなみに、舞城王太郎という名前は、川上未映子の文章で知った(→ ○)。 □ 減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。 返せ。 とか言ってももちろん佐野は返してくれないし、自尊心はそもそも返してもらうんじゃなくて取り戻すもんだし、そもそも、別に好きじゃない相手とやるのはやっぱりどんな形であってもどんなふうであっても間違いなんだろう。 □(9) 〈わたし〉の自尊心を喪失させるのは他者である。しかし、〈わたし〉の自尊心を回復させてくれるのは他者ではない。他者が消失させた〈わたし〉の自尊心を回復するのは〈わたし〉でしかない。〈わたし〉って大変! と思いながらも、〈わたし〉は〈わたし〉として生きていくしかない。代わりはいない。 □ お兄ちゃんが前に、レンタルビデオ屋のエロビの話とは別のときに、確か、「自己憐憫が一番タチわりーんだよ。うじうじ腐るだけで前にも上にも進まねーから」とか言ってた。なんかそのときに一緒に、「とか言っても自己愛もおんなじくらいタチわりーけど。イマイミキとか。あーいうこんな自分が好きとかこんな自分になりたいとか言ってる奴は結局自己完結で終わって人の話なかなか聞かねーんだよな。とにかく自分自分言ってる奴はどいつもこいつもどんなふうでもとにかく最悪」とかイマイミキなんて会ったことも喋ったこともないのに言ってたけど、それはともかく。 □(17-8) 気を抜くと、自分をメタ認知できなくなると、自己憐憫のほうに簡単に行ってしまうから注意。腐っている暇なんてないはずなんだ、本当は。 □ でもアイコ。相良君の名前を出すときもクエスチョンマーク付きだったじゃない。あのねアイコ、好きな人の名前を訊かれてクエスチョンマーク付きで答えてるうちは全部間違いなのよ。愛ってのは迷わないものなのよ。絶対正解で間違いとは無縁のものなのよ。誰々君のことが好きなのかしら?なんてふうには考えないものなのよ。好きな相手が誰だかなんて、答えは唯一無二でこの世で一番明らかなのよ。 □(22-3) 近代=理性の時代、懐疑の時代。愛は懐疑の対象にならない。以上2つのことから導かれるのは、愛は理性の対象ではなく、近代のものではない。 教会の結婚式に参加して、「愛していますか?」と牧師が新郎新婦に訊いて新郎新婦が「はい」と答える場面を見てきたが、わたしは「はい」とは答えられない。なぜならば「愛しています」の意味がまだよくわかっていないから。少しはわかってきたけれど、すっきりはしていない。 □ 「友達かどうかは関係ねーの。手が届きそうなところで誰か困ってたら、普通手、貸すだろ。エチオピアの難民助けるためとかには俺、汗かく気になんねーけど、同じクラスの奴が誘拐されてなんか酷い目にあってるんなら、俺、心配するし、なんか動くよ。普通じゃん?」 正直な物言いだね陽治。なかなか人が言わないことだけど、ホントのこと。人の親切心にも同情心にも、その人なりの限界・境界があるってこと。誰かが物凄い苦痛を感じてのた打ち回っていても、それが遠い場所の出来事だったり現実感薄い感じだったりしたら、人はちょっと手を差し伸べたり、一歩歩いたり、チラッと見ることすら億劫で、しないということ。そんなことありふれてて当然普通のことだけど、誰もなかなか言わない。面倒臭いと同情心はいつもいろんなところで綱引きをやってるってこと。 ま、人はやれること、っつーか、やりたいことしかやれない。 〔略〕 でも自意識守るとかつまんない目的のためでも、いかにも偽善者っぽい感じがしたとしても、それでもやっぱりエチオピアの難民、月の裏のウサギ、別の時空の宇宙人たちを助けてあげて欲しいっぽい。そっちの方がやっぱりいいような気がするっぽい。自意識とか自己像なんて誰にでもあるんだから、そんなこと問題にする必要ないっぽい。 □(93-4) ケアなの?結局はケアなのー? 共同体なの?結局は「愛」の同心円的拡張を唱える共同体主義なのー? @研究室
by no828
| 2011-08-23 17:34
| 人+本=体
|
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自省のために。他者の言葉に出会うから自分の言葉を生み出せる。他者の言葉に浸かりすぎて自分の言葉が絞り出せなくなることもある。自分の言葉と向き合うからその言葉は磨かれる。よろしくお願いします。 by no828 カレンダー
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