2012年 09月 20日
142(602)生松敬三『書物渉歴 1・2』みすず書房、1984年。 ※ 「生松敬三」は「いきまつ けいぞう」。 版元 → ● ただし、本書の書誌情報は掲載されていません。 著者は思想史家、哲学者です。1928年生、1984年没。享年56。若すぎる死を惜しんだ哲学者の木田元が編者となって生松の書物に関する文章、たとえば書評、たとえば個人的な読書記録、を2冊にまとめました。書評の書き方の勉強に、という思惑もあったのですが、それよりもなによりも、著者がたいへんな読書家であり、本が好きであったことが強く感じられる本でありました。 哲学という姿勢について。 しかし、その〔哲学の〕理論体系は、たえず現実の批判・検討によってつきくずされ、きたえられながら、はじめて築き上げられていくものでなければなりません。この抽象・観念世界への上昇と具体・現実世界への下降のたえざる上下運動の道がとざされたとき、もはや理論は理論としての用をはたしえません。ですから、なによりもたいせつなことは、なによりもまずぼくらの生きているこの現実のなかから問題をみいだし、それをどうしたら解決できるかを自分の頭で考え、考えられた理論を現実によって検証し訂正していく、というこの運動にある、といってよいでしょう。(6-7.1) 鶴見俊輔やジョン・ロールズの姿勢あるいは方法。 講義のやりかたについて。 〔略〕私自身は大学での講義は一種読書案内を兼ねるつもりでしゃべっている。 参考にします。 西田幾多郎について。 明治三十年代に中央の文壇や学界でめざましい活躍をしていた高山樗牛や桑木厳翼らよりも二年早く大学を卒業していたが、それが正規の哲学科ではなく哲学選科の卒業であったために長い間地方の高校教師という不遇の位置にいなければならなかった。けれども、その一〇年間の金沢での思索と体験とによって初めて『善の研究』は成立することができたのである。(117.2) わたしへの応援歌ならぬ応援文として読みました。不遇とは優遇のことである、とのちのち言えるように。 参考文献表の書き方について。 なお、巻末に「参考文献にちなむ小論」という文献解題が〔ダンハム『英雄と異端』には〕添えられているが、アメリカの研究者たちがよくやるこういう文献解題はたんなる参考文献の一覧よりも著者の諸文献への評価がうかがわれて、読んで面白いし有益でもある。(174.2) しかしこれは、当該文献(を書いた研究者)に対する相当の理解と文献同士の関係付けが十分にできていないとできない芸当です。もちろん解題までしなくてもそれは必要なことですが。 @研究室
by no828
| 2012-09-20 16:00
| 人+本=体
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自省のために。他者の言葉に出会うから自分の言葉を生み出せる。他者の言葉に浸かりすぎて自分の言葉が絞り出せなくなることもある。自分の言葉と向き合うからその言葉は磨かれる。よろしくお願いします。 by no828 カレンダー
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