2013年 05月 02日
伊坂幸太郎『SOSの猿』中央公論新社(中公文庫)、2012年。36(691) 単行本は2009年に同社 版元 → ● 2つの物語の交錯。伏線が小気味よく回収されていきます。伊坂作品はどれもそうですが(そのはずですが)、巻末に参考文献が掲載されているのが個人的にはよいと思っています。 私の現実的な感覚からすると、「悪魔が憑いていることが恐ろしい」としか思えないのだが、神父はその逆で、「こんな恐ろしい言動をする彼女に悪魔が憑いていなかったら」そのことが恐ろしいと感じていたのだ。 以前、テレビのワイドショー番組で、幼児虐待のニュースの際、訳知り顔の司会者が、「愛するわが子にこんなことをする母親がいるなんて、信じられません。人間の屑ですよ」と憤懣やるかたない表情を浮かべていたのを見て、「そうだろうか」と五十嵐真は首を傾げたくなったことがある。 「なぜなら、家族以外の第三者が、利害関係のない誰かが、『良くなりますように』と祈ることは、誰かを助けたいと思うことは、ひどいことではないはずだからだ。悪いことではない」 「そうじゃないけど、それくらい分かるわよ。親子だから」 「不信感は、その人が失敗するから生まれるわけではありません。失敗を認めないことから生まれるんです」(183) わたしはそこで、「そうか」と納得した。やはりユングの言葉が頭を引っ掻いたのだ。「個人的な病気や苦悩を、もっと普遍的な、人類全般の問題に結びつけることは、その個人に対する治療という意味でも、効果的なんです」と話している。(351) 「何ステレーションですか?」 以前、「布置」を題目に入れた研究発表したことがあります。そうしたら「これは何? どういう意味? 英語だと何?」と訊かれました。説明をしましたが、“わたしのわからない言葉を使うな、現代思想だか何だか知らないけれどもそういうのはわからない、わたしのわからない言葉を使ってわたしを馬鹿にしているのか、どうなのか”のようなことも言われました。わからない言葉があればわからないと素直に言えばよく新たに勉強すればよいのではないかと思うのですが、それはわたしがまだ若いからかもしれません。ただ、若くなくなっても“それ”を知らない自分を恥じずに自分の知らない“それ”を使用した他者を責める、ということはすまいと思いました。ただ同時に、わたしもかなり場違いなところで発表したことは間違いなく、だからわたしにも非があり、やはり場違いであることも再確認しました。そういうわけで「布置」には苦い思い出があります。あのとき「「布置」は伊坂幸太郎も使っています」と応答すればよかったですね。 @研究室
by no828
| 2013-05-02 18:19
| 人+本=体
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自省のために。他者の言葉に出会うから自分の言葉を生み出せる。他者の言葉に浸かりすぎて自分の言葉が絞り出せなくなることもある。自分の言葉と向き合うからその言葉は磨かれる。よろしくお願いします。 by no828 カレンダー
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