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思索の森と空の群青

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2013年 12月 29日

絶望ってどういうときにやってくるか知ってるかい——藤原伊織『テロリストのパラソル』

絶望ってどういうときにやってくるか知ってるかい——藤原伊織『テロリストのパラソル』_c0131823_15145768.png藤原伊織『テロリストのパラソル』講談社(講談社文庫)、1998年。96(751)

 版元 → 

 単行本は同社から1995年。


 学生運動が背景にあります。


「酒の方は必需品じゃないから許せるんだけどね」
「そうか。私はよけいなことをしたのか」いわれてみれば、たしかに不注意だったかもしれない。まだ、この世界のルールに慣れきっていない。私は依然、この場所でアウトサイダーなのだ。
「今後は気をつけることにしよう」
 私がそういうと、タツはようやく微笑を浮かべた。
「まあ、そんなふうに考えることもないけどさ。あんた、善意でやってんだから。とにかくこれは、ハカセには渡しとくよ
 善意は人を傷つけることがある。ほどこしという概念を受容しない風土ではそういうこともある。
(219)

「彼女は結局、君のことを忘れられなかったんだ。ぼくと彼女の会話は、いつも六〇年代の末に戻っていった。どんなときも最後は君の話になった。そのとき、はじめて気がついたんだ。自分が絶望していることに。絶望ってどういうときにやってくるか知ってるかい。この世界で動かしがたい事実のあることを知るときだよ。まだあの電気箱のなかの方が希望はあった。いつかはそこからでられるという希望があった。だが、こちらの方はそんな救いさえない」(361)


@研究室

by no828 | 2013-12-29 15:23 | 人+本=体


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