2014年 11月 24日
川上未映子『六つの星星——川上未映子対話集』文藝春秋(文春文庫)、2012年。32(855) 版元 ● 単行本は2010年に同春秋 6人との対話、7つの対話。 斎藤環 福岡伸一 松浦理英子 穂村弘 多和田葉子 永井均(2回登場) 強く深く長く共感するところが多かったです。 斎藤 インタヴューでも「体は脱げない」ということをおっしゃっていましたが、この感覚はやっぱり女性特有だと思うんです。〔略〕体に対する他者性みたいなものは男性には、実はあまりないんです。身体の自己所属感が強いので、放っておくと男性の身体はどんどん透明になってしまいます。運動して汗をかきたがる男性が多いのも、負荷をかけることで自分の身体を確認したい、ということもあるんでしょう。(11) 斎藤 絶望のさなかの幸福とか、決定論的世界における意志とか、価値の底が抜けた世界における倫理とか、そういう絶対的な逆説の可能性が彼〔ヴォネガット〕のテーマですね。「愛は負けても親切は勝つ」って名言は、そういう逆説を背景にしています。 川上 書くのが苦しいのは、絶対に完璧な本なんて書けない、ということが最初から分かっているからなんですね。 強く深く共感。 福岡 科学をやってきて非常によくわかったのは、科学は「Why なぜ」という疑問にはほとんど答えられないということです。「Why」は出発点としては大事なんですが、結果としては「How いかなる状態になっているか」ということを記述できるだけなんです。(66) 松浦 だけれども、私の不快感の根源はたぶん社会制度じゃなくて、やっぱり物理的な個体間の差異の問題なんですよ。そこから差別も生まれるし、逆に非常に豊かな、それこそ文学なんかも生まれるんですけれども、それも鑑みた上で、文学がなくてもいいから差異がない方がいい、というぐらいに思っちゃってるんです。たとえば人間ひとりひとりが違うから面白い、なんて言うのは、その人が恵まれているから言えるんじゃないかという疑いをもっているんですよ。はたして恵まれていない弱い者の前でそれが言えるのか、と。 川上 評論家の石川忠司さんに、川上未映子の文章にマルが極端に少ないのは、完結して終わらせたくない絶対保留への意思である、といったことを書かれたのですが、あ、そういう側面もあるかも知れない、と素直に納得してしまいました。(118) 川上 多和田さんにとって、小説を書かせる原動力があるとしたら、それはいったい何なんでしょうか。 ずどーん。 川上 すべてのものは、ひとつのフォーマットに入ると、そのフォーマットのなかでのありようを強要されるのかなって。だから、プールの枠に入るとプールの水になって、それがコップだと飲み水になる。 永井 だって人間は死ぬんだからね。しかも若死にする人だっていくらでもいるじゃないですか。そう考えると、殺すというのが最大の悪というのも不思議ですね。(181) 永井 プレイヤーでない者として言っている、プレーヤーでないから言えるという、むしろその構造自体を示したいんです。アインジヒトは「自分はプレイヤーじゃないから、猫であって人間社会の一員でないから言えるんだ」と自分ではっきり言ってしまっているわけですが、本当はそのことを上手く示せたらいいのですけど。 わたしもここに関心があり、考えています。 @研究室
by no828
| 2014-11-24 11:51
| 人+本=体
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自省のために。他者の言葉に出会うから自分の言葉を生み出せる。他者の言葉に浸かりすぎて自分の言葉が絞り出せなくなることもある。自分の言葉と向き合うからその言葉は磨かれる。よろしくお願いします。 by no828 カレンダー
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