2017年 03月 29日
先日、映画「風は生きよという」をI城市で観てきました。S谷区の映画館で上映されているときに行きたかったのですが、都合がつかず。本作はDVDとして販売されているわけではないので、観るためにはどこかの上映会へ赴くか、自身で上映会を企画するか、です。後者をするにしてもまずは前者が必要と思い、公式サイトの上映情報をときどき確認していました。ようやく何とか行けそうであったのがI城市でした。 呼吸器なしでは生きられない人、身体の可動域が大きくない人が与えられた家族から離れて暮らす——その実際が映されていました。また、当事者がそれをどう捉えているのかも映されていました。以前読んだ、渡辺一史『こんな夜更けにバナナかよ——筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』(北海道新聞社、2003年)や横塚晃一『母よ!殺すな』(生活書院、2007年)などを思い出しながら観ていました。また、大野更紗さんのお話をうかがったときのことも思い出されました。 当事者が何を考えているのか、それを実際に知る機会は残念ながらそれほど多くありません。その機会を得られたのがまずはよかったです。しかし、そうした分離構造になっている社会を積極的に変えようとしていない自分にも気づきます。積極的に変えようと思う人たちが出てくるには、そもそも同じところで生活する/できるという状況が広がなければならないのかもしれません。個々人のなかで何を「普通」とするのか、その初期設定がどうなっているのかは重要だと思います。本編のなかで、自分の姿を晒すことが仕事だ、といったセリフがあったように記憶しています。学校で小学生相手にお話をされている場面がありました。小学生たちに車椅子を担いでもらいながら階段を降りられている場面がありました。それが「普通」の初期設定を変えていくのだと思います。そうやって自分自身がいわゆる教育に役割を求めるのも、子どもたちに期待し、すでに大人であるわれわれを免罪するようで、自身に対して推奨するには気が引けるところもありますが、自分に(も)できることは何かと考えたとき、それは間違いなくひとつの方法ではあります。 ないものねだりになりますが、介助者の方々が日々何を感じていらっしゃるのか、それも映像のなかに出てきてほしかったと思いました。介助者が傲慢だ、という不満が本編でも漏らされていましたが、介助者のなかには遠慮がちな人はいないのか。介助する/されるその関係性とはどういうものなのか。その機微を知識や想像だけで感得することはできないでしょう。ほかにもたとえば、今回映画にも出られた四肢麻痺の方が車椅子に乗って講演をされました。介助者の方が、お話をされる方の口の付近にマイクを近づけていました。マイクを持ちながら何を思っているのかが気になりました。端から見ていて、腕が辛そうだ、と思い、ピンマイクではいけないのかな、とも思いました。存在しているけれど存在していないかのようだ、という印象も持ちました。 近くで、はなかなかないと思います。少しだけ遠くで上映がある際は、ぜひご覧になってみてください。また、映画に出られていた海老原宏美さんには『まぁ、空気でも吸って――人と社会:人工呼吸器の風がつなぐもの』(現代書館、2015年)というご共著がありました。わたしは映画のあとに購入しました。これから読みます。 @研究室
by no828
| 2017-03-29 18:32
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自省のために。他者の言葉に出会うから自分の言葉を生み出せる。他者の言葉に浸かりすぎて自分の言葉が絞り出せなくなることもある。自分の言葉と向き合うからその言葉は磨かれる。よろしくお願いします。 by no828 カレンダー
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