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思索の森と空の群青

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2017年 06月 05日

ぼくはその本文や原典を極端に重視する考えは不健全だとさえ思っている——山形浩生『訳者解説』

 山形浩生『訳者解説——新教養主義宣言リターンズ』バジリコ株式会社、2009年。53(1051)


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『新教養主義宣言』も読んでいますが、ここでは紹介していないようです。

 本書には、筆者が各種書籍に寄せた解説が収められています。個々具体的な本の解説の内容はさておき、本をどう使えばよいか、何のために本を読むのか、といった事柄についての著者の考えを引いておきます。著者の主張や洞察を理解することはたしかに大切で、そのためには「(訳者)解説」を読むことが大きな助けとなるでしょう。しかし、その「解説」がつねに正しいとも言えず、やはりまがりなりにも自分で読みとおすことの重要性は消失しないでしょう。“解説には書いてなかったけど、通説でも強調されてないけど、ここにはこんなことが書いてあったのか”という発見も——つねに、ではないけど——あります。

「同じ前提からまったくちがう結論を引き出すような本」にわたしも(もっと)出会いたいです。論理的に興奮させる本というのは決して多くありません。

11)ぼくは本文を形式的に読むより大事なことがあると思っている。それは、著者の主張や洞察をきちんと理解することだ。

12)読者がわからないなりに本文を読んで挫折し、結局著者の主張を中途半端にしか理解できずに終わるのと、山形の解説だけ読んで著者の主張の全貌をまがりなりにも理解するのとどっちがいいか? これは議論のわかれるところだろうけれど、ぼくは後者だと思う。小説でもない限り、読者が本を読むのはそこに書かれた著者の主張や洞察を理解するためだ。ならば山形の端折った解説によってであれ、それがなるべく実現できるほうがいい。

12) 極端なことをいえば、ぼくはその本文や原典を極端に重視する考えは不健全だとさえ思っている。〔略〕歴史的興味以外の理由であえて出発点に戻ることの価値は小さい。

20)人が考えてもいなかったことを考えさせてくれる本、同じ前提からまったくちがう結論を引き出すような本、そして滅多にないけれど、転向を余儀なくさせたような本、そんな本にこそおもしろさがあるし、それを何とかわかってもらおうと解説も長くなるわけだ。

@研究室


by no828 | 2017-06-05 17:23 | 人+本=体


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