2007年12月16日「サラエボの花」@岩波ホール。
映画は、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボに住む母エスマと娘サラの生、ことにその夫=父をめぐる生の物語である。
物語の背景には、1992年に起きた「ムスリム人」「セルビア人」「クロアチア人」をめぐる「民族紛争」がある。
「サラエボの花」のパンフレットによれば、「この紛争では、女性への暴力行為だけでなく敵の民族の子供を産ませることで、所属民族までを辱め、後世に影響を残すことが作戦として組織的に行われた」(p. 19)。
エスマの夫=サラの父は誰なのか。
エスマは知っている。サラは知らない。
サラはエスマに訊く。「わたしのお父さんは誰なの?」
悲しい物語である。
しかし、これは現実に起こったことである。
映画の最後、わたしにはエスマとサラの絶望が、少しだけ希望に変換されたように思われた。
そのように思わなければ、わたしの絶望は絶望のままであり続けたのかもしれない。