思索の森と空の群青

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2014年 10月 19日 ( 1 )


2014年 10月 19日

子供ひとりの生命の代価をたったの五百万円とか一千万円とかに軽く見積ったことは——筒井康隆『富豪刑事』

c0131823_20434061.jpg筒井康隆『富豪刑事』新潮社(新潮文庫)、1984年。23(846)


版元 → 
単行本は1978年に同社


 4作品からなる連作短篇。裏表紙の説明「キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた“富豪刑事”こと神戸大助が、迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を……次々と解決してゆく。金を湯水のように使って」。

 ドラマ化されたようですが、そちらは観ていません。

 と書いて思い出したことがあります。わたしは講義のなかで、本の紹介を学生に課すことがあります。学生の顔と名前を一致させるため、という隠れた目的もありますが、第一義は本を読む習慣を付けてもらいたい、鞄に本を入れておいてもらいたい、本を読んで勉強してもらいたい、というところにあります。しかし、本を紹介するさい、「この本は映画化もされているようなので、本を読むのが大変だという人は、映画を観てください」といったようなことを言う学生が結構いまして、ああ趣旨が理解されていないと、わたしは頭を抱えるのです。


「むろん犯人に対してです。誘拐という卑劣な手段に腹を立てていることはもちろんですが、子供ひとりの生命の代価をたったの五百万円とか一千万円とかに軽く見積ったことはもっと許せない。さらには、たったそれだけの金を支払うこともできない多くの人びとが現実に存在することも腹立たしい。それから、そんなことに怒りを向けなければならない自分にも腹が立つ」
「金持ちの息子として生れたことにも腹を立てとるのだろうな」喜久右衛門が悲しげに言った。「わしはよくない親じゃ。許してくれ」
(「富豪刑事のスティング」152)


@研究室
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by no828 | 2014-10-19 20:46 | 人+本=体 | Comments(0)