2018年 04月 16日
松浦弥太郎『くちぶえカタログ』静山社(静山社文庫)、2010年。63(1130) 単行本は2005年にブルース・インターアクションズ エッセイ集。松浦弥太郎の本を読むと、丁寧に生きる、ということをその都度意識させられる。しかし、丁寧な暮らしはお金がかかりそうだ。資本主義をどのように受け止めるか、資本主義とどのように関係するか、ということも考えさせられる。松浦の受け止め方、関係の仕方をそのまま受け入れているわけではない。 4)自分たちを自立させ美しく健全なものにするものは一体何なのでしょう。心の内側から自然と湧いてくるのは「簡素に生きたい」という精神です。繁栄、快楽、永遠の進歩を夢見る時代はもう終わっています。簡素さとは軽やかで気楽で整然とし愛情を表現できることです。それはバランス、調和、謙虚さを持って、生きとし生けるものの良き隣人になるということです。真の豊かさとは何ひとつ必要としない暮らしにあります。 23)日常生活で、心は嬉しいこと、悲しいこと、苦しいことなど、いろんなこととこすられているはずだ。その度に、心のまわりには小さくて丸い毛玉が出来ているのかもしれない。 149)仕事とは何かと悩む人が多いという。自分はこう考える。仕事とは自分以外の他人のために尽くし抜くことだ。よく「自分のための仕事」云々と言うが、廻り廻ればたしかに仕事は自分のためである。しかしそれを先頭に置いてしまうと、仕事のよろこびはないのと同様だ。力も出ない。自分のためと励ます力なんてたかが知れている。自分の益を捨て、とにかくどうしたら他人の役に立てるだろうか。よろこんでもらえるだろうか。他人に益が生まれるだろうかと、考え抜いて正直に働くことが仕事であろう。その仕事にわき目もふらず自分自身を発揮する努力の積み重ねがはじめて人に届くのだ。そして一番のよろこびは、自分の仕事によって人に笑顔が生まれ仕合わせになっていくことであろう。働いてもらえるお金はその笑顔と仕合わせの量でしかない。どれだけ自分が苦労したかの量ではないことを決して忘れてはいけない。そう、仕事は決してお金のためではないということ。人のために正直親切に働く。それを淡々と続けること。それが正しい仕事の心得だろうと自分は考える。 植村直己の文章の元の文脈が不明。確認できていない。植村は「他人の益」を考えていたのか。それとも、「他人の益」になるかどうかはさておき、「自分自身を発揮する」ことが最重要と考えていたのか。まったく逆だ。 松浦の論理に依拠するなら、わたしにとっての研究は仕事ではなく、教育も仕事ではないということになるかもしれない。「人のために」を教育では簡単に語れない。 161)ジャック・ケルアックの『路上』の中に「It’s an anywhere road for anybody anyhow」という好きな文章がある。この一言が『路上』という本の魅力すべてと自分は思っている。自分は十八歳の時はじめて『路上』を読み、そこに自分の知らなかった自由をみつけた。「誰でもが自由にどこへでも行ける、どんな道もある」。自由とは、「良識と良心」である。本の読み方を考えるとこうだ。良識と良心を持って本を読み、そこから何を自分で発見するのか。読書だけではなくどんなことにも言える。everything for freedom. 235-6)「小欲知足」という僕の好きな言葉があります。これは禅の教えで、小さな欲で足るを知りなさいという意味です。ものはわずかでも人は生きていける。どんなものも過剰に貪ってはいけません。もっと、もっと、と求めてはいけない。そういう風に、意識を外に向けるのではなく、自分の内側に意識を向けて、日々の生活を満たすためには何が必要なのか、と問うことが大切だといいます。自分を満たしてくれるのは、目に見えるものではなく、目に見えない心のあり方であるのです。〔中略〕世界中の人が、この「小欲知足」を唱えたら、現在の経済のシステムは機能しなくなってしまうかもしれません。しかし、欲望を叶えるための成長を人々が追い求めていくと、いつしか地球の自然と生命は破壊されてしまうのではないかとも思うのです。よく言われるように、競争なくして成長なしとは、僕にはどうしても思えません。競争の先には、支配があり争いがあります。そんな渦の中で生きてゆくくらい、不幸なことはありません。 自分と向き合うことは重要だ。だが、足るを知る、という言葉は、誰がどこから言うかも重要だ。単なる恫喝にしかならないこともある。かといって、自分で言えばよいというものでもない。貧しさを合理化してしまうこともある。 @S模原
by no828
| 2018-04-16 22:02
| 人+本=体
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自省のために。他者の言葉に出会うから自分の言葉を生み出せる。他者の言葉に浸かりすぎて自分の言葉が絞り出せなくなることもある。自分の言葉と向き合うからその言葉は磨かれる。よろしくお願いします。 by no828 カレンダー
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