2008年 01月 31日
晴れ。 朝、友人から携帯電話にメール。 文面の基底には「ひとの幸せって一体何なの?」というかなり大きな問いが横たわっているいるように思われた。 その問いを意識の片隅に置きながら研究室に来る。 新聞を読んだあと、うやむやになっていた「構築主義」「構成主義」「社会構成主義」の勉強をする。 結論から言うと、「構築主義」と「構成主義」の違い、constructionism と constructivism の違いはわかったが、「社会構成主義」についてはわからなかった。 また、社会学の下位分野に「社会問題論」があり、その社会問題論における constructionism の議論がわたしの問題意識と近接したところで展開されたことを知る。 その展開をすごく簡単に書いてしまうと、次のようになる(たぶん)。 これまでの実証主義は「社会問題」を実在のものとして自明視=前提してきた。しかし、そもそも「社会問題」とは、社会学者などの専門家が「それ」を「社会問題」と名指ししたことによって生まれたものである。その判断には専門家の立場や価値、利害が介在しており、普遍的に承認されるような「社会問題」は存在しない。それゆえに社会学者が仕事とすべきは、何が「社会問題」なのかを決定することではなく、人びとが何を「社会問題」と見なし、それについてのクレイムを申し立て、そのクレイムを共有してゆくのか、その過程を記述することなのである。 このような問題意識はわたしのそれと非常に近い。 そもそも「問題」とは何なのか。これはわたしが学類の2年生か3年生のときにぶち当たった問いである。 わが学類では「問題解決」型の人間を育成することばかりに力が注がれ、「問題解決」の前に本来存在する「問題発見」については注意を喚起してこなかったようにわたしには感じられる。 しかし、よくよく考えるならば、問題を発見しなければ、あるいは「それ」を「問題」と見なさなければ、「問題解決」はできない。 にもかかわらず、「問題解決」ではすでにそこに「問題」があるかのように考えられてしまう。「ちょっと待った、それってそもそも問題なの?」という問いは封じ込められてしまう。 「問題」とは何なのか。 既述のように、社会学、とりわけそのなかの社会問題論は、「それ」が「問題」であるかどうかを決めるのは社会学者ではなく「人びと」であるとした。 これは「現実」へのひとつのアプローチである。 しかしながらわたしはこれに満足しない。 わたしにとっての「問題」とは、以下のようなものである(これはもちろんわたしのオリジナルな考えではない。たしか経営学の本に書いてあったものだ)。 「問題」 = 「あるべき姿」と「現状」とのギャップ このように定式化すると、まず考えるべきは「あるべき姿」になる。 が、大学院に入るまでわたしは「あるべき姿」を問うとは一体どういうことなのかもわからなかったし、そもそも「『あるべき姿』を問う」という営みが存在するのかどうかも知らなかった。だから「あるべき姿」を問うてよいのかどうかもわからなかった。 大学院に入って、「あるべき姿」についてきちんと考えてもいいんだ、と思った。そう思わせてくれたのは、ある先生であり、哲学であり、とりわけ規範理論の存在である。 だからわたしは「あるべき姿」を正面から問いたい。「それ」が「問題」なのかどうかを見極めたい。そこには立場や価値や利害が介在してくるであろう。自覚しきれない立場や価値や利害もあろう。 それでもなお「学問」の世界から「あるべき姿」を問うてゆくことが必要であるとわたしは思う。開かれたかたちで「あるべき姿」を問うことが必要であると思う。 しかし、「ひとの幸せって一体何なの?」、この問いに規範的に答えることがわたしにはできない。 「ひとの幸せ」のために、哲学や理論は一体どれだけの貢献ができるのであろうか。 わたしにはまだわからない。 だからその問いには、今・ここにいるわたしの、立場や価値や利害にすっぽりと包まれた答えを示す以外に答える方途はない。 だが、何と答えればよいのか、わたしにはわからないのである。
by no828
| 2008-01-31 20:29
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自省のために。他者の言葉に出会うから自分の言葉を生み出せる。他者の言葉に浸かりすぎて自分の言葉が絞り出せなくなることもある。自分の言葉と向き合うからその言葉は磨かれる。よろしくお願いします。 by no828 カレンダー
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