思索の森と空の群青

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2018年 02月 21日 ( 1 )


2018年 02月 21日

人生でつらい出来事を経験し、悩み抜き、それを乗り越えたにもかかわらず「これからも自分は悩み続けていくだろう」と答えていたからです——水野敬也『顔ニモマケズ』

 水野敬也『顔ニモマケズ——どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語』文響社、2017年。30(1097)


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 新刊を購入。共生とか多様性などについて考えるために手に取った。誰もが生きやすい社会というのはありうるのか。少なくとも誰かがとても我慢するのではない、誰もが少しずつ我慢する社会とは、具体的にどう設計できて、どうすればそこに近づけるのか。そこで教育はどのような役割を担うのか。それは「お前には未来がない」と教師が言うような教育ではまずはない。

14-5)中島 うーん。〔顔の症状を〕受け入れてはいないのかもしれない。今でも、この症状が無かったらと思うことはあります。その意味では、受け入れるというより、折り合っていくという表現が近いかもしれません。たとえば、「あきらめる」は、言葉としては良くないかもしれないけど、「あきらめちゃいけない」と思えば、手術しなければいけなくなる。しかし効果的な手術はない。これは苦しい状態です。

15)中島 ずっと相談に乗ってくれていた看護師さんがこう言ったんです。「君は、いつも自分のことばかり気にしてるけど、君を大事に思ってくれている人のことを考えたことはあるの?」と。かなり厳しい口調で言われました。その言葉の意味は——当時、私は自分の顔ばかりを気にしていましたが、それ以外の部分の良さを認めてくれる人たちも周りにたくさんいて、その人たちの気持ちに応えることも考えなさいということだったと理解しています。

18)中島 逆に、家の中にいると、どうしても意識が自分に向いてしまいます。苦しいなぁとかつらいなぁとか、そういう部分ばかりに目がいきますよね。するとどんどん気持ちが沈んでいってしまいます。だから外に出て、「ああ、自分はこういうものが好きなんだ」と夢中になれる対象を「外に見つける」ということが大事だと思います。だから私は、見た目に症状があったり、外見に自信のない人こそ、外に出てもらいたいし、経済的な余裕が許せば、ぜひ海外にも行ってもらいたいと思います。

60)泉川 自分が気にしていることも、周囲の人は違う風に見ていたりしますよね。自分の自分に対するフォーカスと、他者の自分に対するフォーカスはズレているものだと気づくことで目のことは気にならなくなっていったんだと思います。

71)泉川 ただ、僕は最近、自分がこの症状を受け入れていることが嫌なんです
——といいますと?
泉川 昔は、こうやって目の話をするのはあまり好きじゃなかったんです。でも、最近は「何でも聞いてくれ」という感じになってしまっていて……それはある意味で「症状を受け入れた」と言えますが、同時に、弱くなっている自分も感じています。
——その考えは面白いですね。ただ、今の自分を受け入れないということは、ずっと悩み続けることになると思うのですが……。
泉川 それで良いと思います。僕は、悩みが無くなることよりも、弱くなることが嫌なんです。

143-4)三橋 私には「将来への不安」というのがずっとあったんですね。自分のような症状を持っていたらちゃんと就職することもできないだろうし、いつかまともに働けなくなって生きていけなくなるんじゃないかという、そういう不安がいつも頭の片隅にありました。ああ、そういえば……小学生のころに、教師から「お前には未来がない」ということを言われたんです。顔にアザがあることを理由に「他の生徒とは違って、お前には未来がない」と。もちろん、その教師の言葉だけが原因というわけではありませんが、幼少期から、将来への強い不安を持っていました。

151)三橋 これは私がいつも考えていることですが、「顔のアザが相手に不快感や違和感を与えるのは仕方がない」ということです。そして顔のアザは私には変えることができない。しかし、そのあとの会話や行動で印象を変えていくことはできます。いつもそういう考えで面接に臨んでいました。
——営業の仕事をする上で顔の症状はどのような影響を与えていますか?
三橋 その質問に答えるのはなかなか難しいですね。もし営業でうまくいかないことがあったとして、それをどこまででも顔のせいにできてしまいますから。でも実際は、ただ私の会話の能力が低かったからなのかもしれません。

153)三橋 要は、コミュニケーションを取ることで「普通の人」だと理解してもらうことが大事だと思うんです。お互いに会話がないから必要以上に恐れられてしまう。でも、会話をしてみたら「ああ、なんだ、他の人と同じ人じゃないか」と理解できます。その状態にできるだけ早く進むように工夫しています。だから相手が子どもの場合は、ジャンケンをきっかけにコミュニケーションを取ることもありますね。
「他の人と同じ」だということを分かってもらうことは、私のような見た目を持つ人間にとってはすごく大事なことだと思います。顔に症状がある人を見たことがない、ましてや話したことがないから、みんな不安になって、攻撃したり排除しようとしてしまう。でもこれは、見た目の問題というより、コミュニケーションの問題なんです。
 だから、私は、先ほど自分のアザをメイクで隠さない理由として「メイクをしても隠せない部分がある」という言い方をしましたけど、実はもう一つ理由があって……それは、世の中の人が私の症状——血管腫に少しでも「慣れ」てもらえたらいいなという思いがあるんです

200)(どうしてこんなにも心が揺さぶられるのだろう)
 そのことをずっと考えていたのですが、すべての人の話を聞き終わり、内容をまとめていたときにその理由が分かった気がしました。それは彼ら・彼女らは人生でつらい出来事を経験し、悩み抜き、それを乗り越えたにもかかわらず
「これからも自分は悩み続けていくだろう」
 と答えていたからです。
 ※「おわりに」


@S模原

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by no828 | 2018-02-21 22:23 | 人+本=体 | Comments(0)